
遺産分割に関するQ&A

遺産分割に関するQ&A
戸籍の広域交付とは?遺産分割・相続放棄にどう影響?
Question
戸籍の広域交付制度とは何ですか?
遺産分割や相続放棄に必要な戸籍等は、すべて最寄りの市区町村の窓口で取得できますか?

Answer
戸籍の広域交付制度とは、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本を取得できる制度で、この制度を利用することにより相続手続における戸籍の収集がより簡単になりました。
ただし、全ての戸籍が広域交付の対象となっているわけではなく、以下の戸籍等については本籍地の市区町村役場へ個別に請求する必要があります。
・コンピュータ化されていない戸籍
・兄弟姉妹が被相続人となる場合の戸籍
・戸籍の附票(住民基本台帳法に基づく証明であるため)
戸籍の広域交付制度と相続手続(遺産分割・相続放棄)について、より詳しくお知りになりたい方は以下をご覧ください。
1 戸籍の広域交付制度とは?
戸籍の広域交付制度は、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本を取得できる制度で、2024年3月1日から全国で運用が開始されました。
従来は、戸籍を取得するには本籍地の市区町村役場へ個別に請求する必要があったため、相続登記や相続放棄の際に、複数の自治体へ何度も戸籍を請求しなければならないというケースが少なくありませんでした。
しかし、広域交付制度が開始されたことで最寄りの役所でまとめて戸籍証明書を取得できるようになり、相続手続における戸籍収集の利便性が格段に向上しました。
戸籍の広域交付制度については詳しくは法務省のWebサイトをご覧ください。
戸籍法
第120条の2
1 第百十九条の規定により戸籍又は除かれた戸籍が磁気ディスクをもつて調製されているときは、次の各号に掲げる請求は、当該各号に定める者に対してもすることができる。
一 第十条第一項(第十二条の二において準用する場合を含む。次項及び次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求 指定市町村長(第百十八条第一項の規定による指定を受けている市町村長をいう。以下同じ。)のうちいずれかの者
二 第十条の二第二項(第十二条の二において準用する場合を含む。次条(第三項を除く。)において同じ。)の請求(市町村の機関がするものに限る。) 当該市町村の長(指定市町村長に限る。)
2 前項の規定によりする第十条第一項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)については、同条第三項及び第十条の三第二項の規定は適用せず、同条第一項中「現に請求の任に当たつている者」とあり、及び「当該請求の任に当たつている者」とあるのは、「当該請求をする者」とする。
第10条
1 戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
2 広域交付制度を利用した戸籍の請求方法
戸籍の広域交付制度を利用できるのは以下の方に限られます。
・戸籍に記載がある本人
・配偶者
・直系尊属(父母・祖父母など)
・直系卑属(子・孫など)
※兄弟姉妹やおじおば、甥姪の戸籍は広域交付制度を利用して請求できません。
また、手続を行う際は以下の点に注意が必要です。
・本人が市区町村役場の窓口で請求する必要がある。
・顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)が必要。
・郵送や代理人による請求はできない。
※請求方法については、長崎市のWebサイトもご参照ください。
3 広域交付制度で取得できる資料
広域交付制度を利用すると以下の戸籍証明書を取得できます(コンピュータ化されているものに限る。)
・戸籍謄本(全部事項証明書)
・除籍謄本(全部事項証明書)
・改製原戸籍謄本
※個人事項証明書や抄本、戸籍の附票については広域交付の対象外ですので、これらが必要な場合には引き続き本籍地の市町村役場へ請求する必要があります(戸籍法施行規則の附則により当分の間は個人事項証明書や抄本については広域交付制度の対象外とされており、戸籍の附票については住民基本台帳法に基づく証明であるため広域交付制度の対象外となっています。)。
戸籍法施行規則附則(令和6年2月26日法務省令第5号)
第3条(請求することができる書面等に関する経過措置)
1 戸籍法第百二十条の二第一項の規定により第十条第一項又は第十条の二第二項の請求(本籍地の市町村長以外の指定市町村長に対してするものに限る。)をする場合においては、当分の間、戸籍又は除かれた戸籍に記録されている事項の全部を証明した書面に限り、請求することができるものとする。
2 戸籍法第百二十条の三第一項の規定により第十条第一項又は第十条の二第二項の請求をする場合においては、当分の間、戸籍又は除かれた戸籍に記録された事項の全部を証明した電磁的記録に限り、請求することができるものとする。
4 遺産分割・相続放棄との関係
4.1 遺産分割・相続放棄に必要な戸籍等の一覧
遺産分割や相続放棄には以下の戸籍が必要となります。
【共通】
・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している人物がいる場合、当該子及びその代襲者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票又は戸籍附票
【第二順位者の場合】
・被相続人により親等の近い直系尊属がいる場合、当該直系尊属の死亡の事実の記載のある戸籍謄本
【第三順位者の場合】
・被相続人の父母の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍
・被相続人の兄弟姉妹に死亡している人物がいる場合、その兄弟姉妹の出生時か死亡時までの全ての戸籍謄本
・相続人が代襲相続人(甥又は姪)の場合、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本
【共通】
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・申述人の戸籍謄本
【配偶者の場合】
・被相続人の死亡の事実が記載された戸籍謄本
【第一順位者の場合】
・被相続人の死亡の事実が記載された戸籍謄本
・申述人が代襲相続人の場合、被代襲者の死亡の事実が記載された戸籍謄本
【第二順位者の場合】
・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している人物がいる場合、当該子及びその代襲者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人により親等の近い直系尊属がいる場合、当該直系尊属の死亡の事実が記載された戸籍謄本
【第三順位者の場合】
・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している人物がいる場合、当該子及びその代襲者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載がある戸籍
・申述人が代襲相続人(甥又は姪)の場合、被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本
4.2 広域交付制度で戸籍を取得するほか、追加で取得する必要がある戸籍等
以下の戸籍については、広域交付制度では取得ができないため戸籍等を追加で取得する必要があります。
遺産分割で不足する戸籍等
【共通】
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の住民票又は戸籍附票
・コンピュータ化されていない戸籍謄本
【第三順位者の場合】
・被相続人の兄弟姉妹に死亡している人物がいる場合、その兄弟姉妹の出生時か死亡時までの全ての戸籍謄本
相続放棄で不足する戸籍等
【共通】
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・コンピュータ化されていない戸籍謄本
【第三順位者の場合】
・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
・被相続人の子及びその代襲者で死亡している人物がいる場合、当該子及びその代襲者の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
※本記事では「戸籍の広域交付と相続(遺産分割・相続放棄)」に関するポイントをご紹介いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。 そこで、相続問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めいたします。