
相続放棄に関するQ&A

相続放棄に関するQ&A
被相続人に住宅ローンがある場合、相続放棄すべき?
Question
夫が亡くなったのですが、生前、夫名義で住宅ローンを借りて自宅を購入していました。
しかし、自宅を査定してもらったところ、自宅を売却しても住宅ローンの残債を完済できず、1000万円以上のローンが残ってしまうことが分かりました。
また、夫には自宅不動産以外にほとんど財産がなく、夫名義の財産で住宅ローンを支払うこともできません。
このような場合、相続放棄すべきでしょうか?

Answer
通常、住宅ローンには「団体信用生命保険(団信)」が付帯しているところ、債務者が亡くなった場合には生命保険会社が金融機関(債権者)に対し住宅ローン残額相当の保険金を支払うことで、住宅ローンが完済となります。
そのため、住宅ローンを理由として相続放棄する必要はないというのが一般的です。
ただし、フラット35など団信の加入が必須ではない住宅ローンを借りていた場合、相続放棄を行うべき場合もあります。
住宅ローンと相続放棄の関係について、より詳しくお知りになりたい方は以下をご覧ください。
1 住宅ローン債務の特殊性
住宅ローンは、住宅購入を目的とするローンであるため、借入金が大きく、返済期間も35年と長期にわたるのが一般的です(近年では返済期間を50年とする超長期の住宅ローンも出てきています。)。
このように、借入金額が大きく返済期間も長いため、ローンの返済が困難になるリスクも小さくありません。
そのため、住宅ローンには通常「団体信用生命保険(団信)」が付帯しています。
2 団体信用生命保険(団信)とは?
未支給年金は「自己の名で」請求できる(国民年金法19条1項)ものであるため、受給権者は未支給年金を固有の財産として受領することになります。
そのため、法定相続人は相続放棄した場合でも未支給年金を受給することが可能です。
2.1 団信の内容
団信は、住宅ローンの債務者が死亡したり所定の高度後遺障害状態となった場合に、生命保険会社が住宅ローン残額に相当する保険金を金融機関(債権者)へ支払う保険です。
一般的な団信は、住宅ローンの債務者が死亡または高度後遺障害状態となった場合を対象としていますが、以下のような特約が付いた団信も存在します。
・ガン団信:ガンと診断確定されたら場合に住宅ローン残高が0円となる。
・その他疾病保障付団信:がん以外の疾病の場合も保証がある。
一般的な団信の保険料は住宅ローン金利に含まれているため、住宅ローンの債務者が別途支払う必要はありませんが、ガン団信やその他疾病保障付団信を付帯させる場合には住宅ローン金利に上乗せ金利が加算されます。
団信の契約者、被保険者、受取人
団信の場合、住宅ローンの債権者である銀行等を保険契約者及び保険金の受取人とし、住宅ローンの債務者を被保険者としています
保険契約者:生命保険会社との間で保険契約を締結する人
被保険者:保険の対象となる人
受取人:保険金を受け取る人
2.2 団信が付いていない場合
住宅ローンには通常、団信が付帯していますが、以下のような例外もあります。
・フラット35:団信への加入は任意のため、加入していない場合がある。
・一部の住宅ローン:健康上の理由などで団信に加入できない場合、団信なしで借りられる住宅ローンがある(ただし、金利は一般的に高くなる)。
健康上の問題があり団信に加入できない場合、団信への加入が必須である一般的な住宅ローンを利用できないため、フラット35などの団信加入が不要なローンを選択するケースが多くなっています。
2.3 結論
被相続人(夫)が住宅ローンを借りていた場合、通常、住宅ローンには団信が付帯しているため相続発生により住宅ローンの残債は返済不要となります。
そのため、住宅ローン債務を理由として相続放棄をする必要はないというのが一般的です。
ただし、フラット35など住宅ローンに団信が付帯していない場合が稀に存在します。
そのような場合、不動産の価値、住宅ローン残高、被相続人のその他の財産状況、不動産を利用する必要性の高低、不動産を利用しない場合に要するコスト(転居費用、転居先の賃料等)を考慮した上、相続放棄すべきか慎重に検討する必要があります。
3 団信が付帯していることに気づかず相続放棄した場合どうすればよい?
万が一、住宅ローンに団信が付帯していることに気づかず相続放棄してしまった場合、どのような対応を取ればよいでしょうか。
このような場合の対応として、①相続放棄の取消申述を行う、②後順位者が相続を承認する前に法定単純承認事由に該当する行為を行う(民法921条3号)などの対応が考えられます。
ただ、このような場合には専門家のサポートを受ける必要性が高いため、早急に弁護士へ相談することをお勧めいたします。
なお、相続放棄の取消しについては、相続問題Q&A「相続放棄は取り消せる?」をご覧ください。
※本記事では「被相続人に住宅ローンがある場合、相続放棄すべきか」に関するポイントをご紹介いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、相続問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めします。